失語症について

 “失語症”という用語をご存じでしょうか。
 失語症とは「大脳の損傷に由来する、一旦獲得された言語記号の操作能力の低下ないし消失」と定義されています(山鳥 1985)。
 日常的に聞き慣れない、あるいは見かけない用語が並んでいるため難解ではあると思いますが、この定義には失語症を理解するための重要なポイントが含まれています(高倉ら 2023)。

① 「大脳の損傷に由来する」:精神的ストレスや心的外傷などの「心因性」によって生じる症状ではなく、脳の病気(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)に由来する言語障害であること。
② 「一旦獲得された」:発達性のことばの障害(言語発達障害や発達性読み書き障害)とは異なること。
③ 「言語記号の操作能力の障害」:発話に必要な口唇、舌、軟口蓋、喉頭などの麻痺に由来する運動障害(例:呂律不良、開鼻声、嗄声など)とは異なること

 重症度によって違いはありますが、失語症になると「ことばを聴いて理解する能力」、「伝えたいことをことばして伝達する能力」、「文字を読む能力」、「文字を書く能力」などが部分的、あるいは全般的に障害されてしまいます。
 一方で、失語症は完全回復とはいかないものの言語治療によって長期的に回復する可能性が指摘されています。しかしながら、言語治療によって回復を示した機能は脆弱であることも指摘されています(中川 2014)。つまり、言語治療によって回復した能力は、必ずしも維持されるわけではないということです。

 当室では、失語症治療の経験が豊富な言語聴覚士が在籍しています。医療機関での言語治療を終えた方、失語症でお悩みの方、身内に失語症の方がいて相談先がわからず困っているご家族様がいらっしゃいましたら、お気軽に問い合わせください。

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